実際の導入例および論文のご紹介

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「MBTI活用による心の意識化とHRMの関係」
(インタビュー記事)

出典:「DBM REPORT Vol.6」 (発行:日本ドレーク・ビーム・モリン株式会社、2002年12月)

従来の性格検査とは異なるMBTI。世界各国での豊富な利用例が、その有効性を物語る。しかし日本における歴史はまだ浅く、今後急速に普及していくと予想されている。今回のエッセイは、日本で唯一米国MBTI学会よりMBTIトレーナーとして認定され、MBTIの日本への導入に尽力してきた園田由紀氏に依頼した。

世界で最も利用されている性格検査は、ユングのタイプ論に立脚している。

現在、世界で最も利用されている性格検査はMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)である。これは、ユングが提唱した心理学的タイプ論をもとにアメリカ人が開発した検査で、世界45ヵ国に翻案され、キャリアカウンセリング、組織開発、リーダーシップ開発、チームビルディングなどさまざまな場面で利用されている。MBTIの歴史は50年にもなり私自身10年以上にわたって携わってきたが、日本で本格的に導入できたのは2年ほど前のことである。

MBTIは従来の性格検査とは異なり、性格特性を相対的にとらえるのではなく、個人だけに焦点を当てる。その焦点の当て方は、「我々の心は常に動いてはいるがその動きにパターンがある」という考え方をとっている。パターンがあるが故に、心の動きは独自の強みや盲点などもあるのだが、本人にとっては当たり前の動きなのでそれに気づかないことが多い。また、自分にとって当たり前の心の動きであるがために、周囲の人も自分と同じようなパターンで動くと思い込み、その結果として対人関係の行き違いやコミュニケーションの弊害が起こることもある。そのMBTIが果たす役割は、個人が自分の心のパターン情報処理にシステムに気づくためのきっかけを与えることである。
ユングのタイプ論では、我々の住む世界は、光と闇、男と女など一方が存在しないともう一方も存在しないが、それぞれは対極のものという二律背反で成り立っているのと同様に、パーソナリティもその構造で成り立つと考える。心の情報システムの中に情報の取り方と処理の仕方の二局(知覚と判断)があり、情報の取りかたにも二極(感覚と直観)、取った情報の処理の方法にもやはり二極(思考と感情)がある。そしてそれらが心のエネルギーの二極(外向と内向)によって働くとした。人は本来すべての二極とも使うことができるが、二極のうちのどちらか一方、使いやすいほうを選ぶ。使いやすいほうの心、つまり「心の利き手」を優先して使う。そこに心のパターンが生まれてくるわけである。
そしてMBTIは、このユングのタイプ論をもとにして質問紙に落としたものだが、通常の性格検査とは違い性格の診断は行わない。検査を受けた本人が、自分の心の癖やパターンを知り、自分への理解を深めていくことに主眼が置かれている。そのため検査を受けた人は、この一定の訓練を受けたことの支援のもとに自己への理解を深めるプロセスを踏んでいく。これらのすべてを含めてMBTIと呼ぶので、性格検査というよりはひとつのメソッドとして使われている。

心の意識を通じて自分への気づきと理解を促進していく枠組

次に、MBTIをコーチングやリーダーシップ開発などのさまざまな局面で有効に使うことができる背景を見ていこう。個人の中でごく当たり前に動いている心の動きは、当然のことながらリーダーシップスタイルやコミュニケーションスタイル、さらには課題解決スタイル、人間関係スタイルなどに関わっている。
ある個人がとっているリーダーシップスタイルは、その人の当たり前の心の働きによるものであるかもしれないし、逆に求められているリーダーシップスタイルを実現するために、利き手ではない心を使っているのかもしれない。
漠然とリーダーシップスタイルを身につけろといわれても、それだけで身につけることは難しい。しかし、ひとたび自分の心の癖やパターンを知れば、自分にとって何が自然で、何が軽視しがちなリーダーシップスタイルなのかということを、少なくとも意識できるようになる。人間は意識したものならば必ずコントロールすることができるし、コントロールできれば必ず開発することができる。
このようにMBTIは、心の中の複雑に絡み合うものを意識化させていく。そして、自分の心を意識化することが自分への気づきや理解を促進するための枠組になる。リーダーシップスタイル、コミュニケーションスタイル、課題解決スタイルを自分で意識化していくための枠組としてMBTIは使われているのである。
360度フィードバックなど、リーダーシップに関するHRソリューション・ツールがあるが、欧米ではこれらを単独で使用するケースは少なく、MBTIを併用するケースが増えてきている。人間は主観的な生き物であり、自分の軸で物事を見る。逆に自分の軸を外してみるのはほぼ不可能に近い。だからこそ対象者の自己理解のために用いられるだけでなく、人を評価する側のひとつのトレーニングとして、MBTIが重要になってくるのである。自分がある情報に対してどういう見方や判断を行うかということを知らなければ、与えられた情報をうまく活かすことができない。そのためMBTIはアセッサーに限らず、カウンセリングではセラピスト、キャリアカウンセリングの場合にはカウンセラー側の自己理解のトレーニングとして有効に活用されているのだ。

個々の性格も資源と捉えチーム全体のパフォーマンスを向上させるのがMBTI

相手の言わんとすることを理解するのは本来、非常に難しい。聞いた側にも自分の色があるからだ。自分が優先的に使う心があり、同時に相手にも優先的に使う心の利き手がある。自分が軽視している心の働きを相手が優先する場合が少なくない。つまり、自分の利き手ではないほうの心を働かせることで相手をより理解できることになる。自分の中にあるものを理解することによって、他者を理解することが可能になるのだ。
コミュニケーションにおいても、心のタイプが違うと、使う言語も異なると言われている。英語と日本語の違いと同様に、同じ日本語であっても心のパターンやタイプが異なると使う言葉が違ってくるのである。物の見方すなわち知覚には感覚と直観があるが、感覚を利き手とする人が言う事実と、直観を利き手とする人が言う事実には概念的な隔たりがある。この場合、本人同士は同じことを言っているつもりでも、利き手としないほうの心の働きを意識できないと、お互いに理解し合えないことになる。
これは動機付けを考える際にも当てはまる。人間を利き手の心を使っているとき、最もモチベーションが高まるのだが、限界に挑むような仕事を任せられることに動機付けられる人もいれば、拒否反応を起こす人もいる。仮に職場の上司が前者だったとして後者である部下に上司自身が動機付けられる環境を与えた場合、上司の意に反して部下は潰れてしまうことにもなりかねない。

いの心の利き手を理解し合うことが、チームダイナミズムを可能にするのだ。昨今のアメリカではMBTIがよく利用されている。それはチェンジマネジメントを実行していくうえで、変化への対応が人によって異なることに注目しているからだ。事実、業績を伸ばし続けているサウスウエスト航空では全社員に入者時や管理職への昇進時など節目ごとにMBTIを用いた研修を行っている。自分を理解し、互いを尊重する中で、組織しての高いパフォーマンスを実現していると言えるだろう。

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