実際の導入例および論文のご紹介

日本MBTI協会認定MBTIアドバンスユーザ(レベル2有資格者)による論文

「教師の自己分析と子どもの個性を発見するためのMBTI」
(千葉敬愛短期大学 大野雄子)

出典:Japan-APT第1回大会プログラム(2005年刊)

1.MBTIの導入目的

 今日の学校は、不登校、いじめ、非行と様々な問題を抱えている。もし、一人ひとりの子どもの身近に個性を肯定してくれる大人がいたなら、子どもは、自己肯定感を持つことができ、「自分でいいのだ」「いろいろな人がいてもいいのだ」という感覚を体験できるだろう。それは、子どもの様々な問題を未然に防ぐ関係作りに繋がるのではないだろうか。 教育とは、子どもが自分自身の力で「自分らしさ」を追求して行くことにあり、学校は、本来子どもの個性を認め、育ちを見守る楽しい場である。その中で教師は、いろいろな子どもに接し、個性を見出す役割を担っているが、本来人間は、主観的動物である以上、教師自身の枠組みにとらわれた見方でなく、公正な視点を持つための訓練が必要なのである。 本実践は、教師がMBTIを用いた自己分析を通し、自分の個性を大切にする喜びを知ることが、子どもの個性をも大切にし、その喜びを共有することに繋がるかという目的を持ち、以下の課題に取り組んだ。

(1)教師がMBTIによって自己分析をすることによって得られた様々な気づきが子どもに接する視点にどのような変容をもたらすか。

(2)教師という職業にタイプの傾向が存在するのであれば、それは、教師と子どもの関係性にどのような影響が考えられるか。

2.MBTIの展開方法と実践内容

  • 教師の長期研修や10年目研修等の場で、予めMBTIを実施し、特定の手順(園田2000 『MBTI手引き』)に従い、グループフィードバックを行った後、教師としての教え方についてのアンケート(自由記述)を実施した。
  • アンケート結果は、筆者がKJ法によって分類した後、他者評定を行い、誤差については、筆者と協力者間で協議した。…(1)
  • 教師集団の16のタイプ出現率から各指向別、各タイプ別のSSRを求めた。…(2)

3.MBTIの結果と考察

(1)アンケートの結果は、第一に子どもに対する教師の価値観を意識化すること、第二にそれが明確になることで、これからの教育の中で子どもをどのように支援をしていくか自分を調整できるようになること、第三に、それは子どもと教師の間に留まらず、教えることをめぐる教師間の関係性を意識することへ繋がり、教師同士がいかに連携を持つことに意義があるかということに分類できた。

① 自己分析に伴う子どもへの価値観の意識化

  • 自己分析をきっかけに、一人ひとりの子どもにも固有の心の動きがあると知り、「ふつう」という観点が自分の基準でしかなかったことに気づいた。
  • 自分の指向の枠組みが子どもを観ていたことへの気づき
  • 経験知によって行い、無自覚だった自分の教え方への気づき

② 今後の個性を踏まえた子ども支援の方向性

  • 生徒の個性を見つめる視点の変容(相対的から絶対的への広がり)
  • 教師と生徒のタイプを考慮した指導の必要性への気づき

③ 教師間の生徒をめぐる連携のあり方

  • 教育現場でおのずと作り出されがちな教師像についての気づき
  • 教師同士の相補性(タイプの異なる教師同士の尊重)

 以上、MBTIの教師への実施は、教師が性格の多様性を知ることで、子どもに対してもその多様性を発見し、個を活かす支援をしていくために、アクションプランをたてるための方策として有効であるということが分かった。

(2)調査した教師集団内におけるタイプを指向別の結果は、(タイプテーブル1)E=61.22%、I=38.78%、F=79.59%、T=20.41%、J51.02%、P=48.98%であった。ここでいえるのは、F指向が集団の半数以上を占め、T指向が少ないF偏重の組織であると言うことである。実践した教師集団のSSRは、ENFP=2.17、ENFJ=2.14と通常よりも2倍の出現率である一方、INTJ、ISTP、ESTPは出現となかった。教師という職業は、F指向が選択し易いのである。視点を変えると、教師集団では、F指向のタイプの役割がマジョリティーとなり、T指向のタイプの役割がマイノリティーとなっている可能性がある。F指向の子どもにとっては、自分の利き手を使うため理解し易い事柄が、T指向の子どもにとっては、利き手でない心の機能を使うことから違和感を覚える場面もあろう。また、INTJ、ISTP、ESTPタイプの子どもは、学校で自分と同じ指向を得意とする教師に出会うことが少ないと言える。

  (n=49)
ISTJ
n=3
%=6.12
■ ■ ■ ■ ■ ■
SSR=0.70
ISFJ
n=9
%=18.37
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
SSR=0.70
INFJ
n=1
%=2.04
■ ■
SSR=0.83
INTJ
ISTP
ISFP
n=1
%=2.04
■ ■
SSR=0.23
INFP
n=3
%=6.12
■ ■ ■ ■ ■ ■
SSR=1.02
INTP
n=2
%=4.08
■ ■ ■ ■
SSR=1.25
ESTP
ESFP
n=5
%=10.20
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
SSR=1.39
ENFP
n=11
%=22.45
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
SSR=2.17
ENTP
n=2
%=4.08
■ ■ ■ ■
SSR=1.25
ESTJ
n=2
%=4.08
■ ■ ■ ■
SSR=0.45
ESFJ
n=7
%=14.29
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
SSR=1.14
ENFJ
n=2
%=4.08
■ ■ ■ ■
SSR=2.14
ENTJ
n=1
%=2.04
■ ■
SSR=0.75

(タイプテーブル1)

4.MBTIの今後の課題

現在、F偏重組織が子どもに与える影響として、教育現場で起こりうることについて研究中である。幼児教育者志望の学生を対象に(F指向が97.5%のF偏重の集団である)以下は、「公平」について、小学生に分かるように説明せよ。という問いかけをした際の自由記述結果の一例である。以下、T指向がある普遍的な尺度や基準に価値を置いて「公平」を説明するのに対し、F指向は自分や相手の気持ちが納得することに価値を置きやすいと言うことが理解できた。このようなことが子どものモチベーションに多大な影響与えると感じる。教師が自分の指向に無自覚に支援することが子どもにとって、不納得な状況を引き起こす一要因となす可能性が高いのである。この様な指向による解釈の違いはほんの一部である。これらを踏まえ、教師が自分自身のティーチングスタイルに柔軟な気づきを得て、子どものモチベーションを高め、ラーニングスタイルに見合った形で学習指導をはじめ、学校教育の取り組み考えていくことこれが今後の課題といえる。

(一例)

< F指向>:1つしかないお菓子を2人とも食べたいとき、2人が納得するように、同じように半分にします。こんな風に皆が「うん、いいよ」と納得することを公平と言います。もし、1人が要らないと言って、もう1人が食べたいと言ったら、1人しか食べないことも2人の気持ちの中で納得していることなので公平といえます。

< T指向>:席替えをするとして、足の速い子はみんなより席をとるのも早いよね、だから、くじ引きで席替えをしたら、みんな同じ条件で席が決まるよね。

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