実際の導入例および論文のご紹介

「再就職支援におけるMBTIの活用について」
(アウトプレースメントサービス業界トップ企業D社 事業支援部副部長)

出典:Japan-APT第1回大会プログラム(2005年刊)

当社は、日本に初めてアウトプレースメントサービスを始めた会社であります。お陰様で、過去23年間に約42,000名の方々の再就職を支援して参りました。私は、1999年の4月に入社し、主として再就職支援プロセスの品質向上およびキャリア・カウンセリングの実務等を担当して参りました。この間、当社として1000名を超える求職者の方々にMBTIのフィードバックを実施いたしました。これからご紹介させていただく内容が皆様の今後の活動に役立てれば大変うれしく思います。

1.MBTIの導入目的

MBTIの導入目的には二つあり、一つは「再就職支援プロセスにおける品質向上」であり、もう一つは「コミュニケーションスキルの向上」のためでした。当社の再就職支援プロセスは、いわゆるシステマチックアプローチに基づいており、初期段階の自己分析という段階において自己理解の促進という大変重要なプロセスがあります。この自己分析の中の「性格分析」というものの品質をより向上させるために、MBTIを導入することにいたしました。また、求職者の方々には、新しい職場おいて良好な人間関係を早期に構築し維持していくことは、仕事をしていく上で極めて重要なことからコミュニケーションスキルを向上させるプログラムが必要でした。特に、長い間大企業で仕事をされてきた役職者の方々の中には、自分の考えに固執される方もおり、そういう方々には必要不可欠なことであります。

2.展開方法と実践内容

①セミナーの企画

2001年の秋に認定ユーザーの資格取得後、早速MBTIのフィードバックセミナーの企画作業に着手しました。マンツーマンでのフィードバックも検討したのですが、グループで他人の考えを聞くことでグループダイナミクスにより自己理解が深まると判断し、定員を12名として組みました。

②社内向けセミナーの実施

次に、求職者を担当しているコンサルタント向けに、MBTIを理解してもらうことを目的に社内向けセミナーを実施いたしました。これは、求職者の方々向けのセミナーのリハーサルの意味もあり、セミナー終了後改善提案等の意見をもらい、プログラムの修正を行いました。

③求職者向けセミナーの実施

そして、2001年12月より求職者向けセミナーを立上げ、その後月1回のペースで開催していきました。

④インハウスでの認定ユーザー研修を実施。全国展開へ

当初は、東京地区のみでMBTIを実施しておりましたが、全国に拠点があったことから認定ユーザーを増やす必要があり、インハウスでの認定ユーザー研修を実施していただきました。その後、東京と同様のセミナーを全国各地で実施する運びとなりました。

⑤セミナー参加後のフォロー

セミナー参加後の個別カウンセリングにおいては、常にタイプの特徴とキャリアとを関連付けながら求職者の方々と共に考えることをしております。

※当社が主催する「キャリアコンサルタントの養成講座」においては、自己分析ツールの紹介においてMBTIを紹介させていただき、受講生の方々にセミナー形式で実際に体験していただいております。毎回高い評価をいただいております。

3.MBTIの効果

MBTIの効果としては、次の4つを挙げたいと思います。

①自己理解を深めるきっかけを提供できる
②コミュニケーションスキルを向上できる
③自己肯定感が生まれる
④自己開示のきっかけを提供できる

まず、最初の「①.自己理解を深めるきっかけを提供できる」ですが、MBTIの大きな特徴である「診断ツールではない」ということが、自己理解を深めることに非常に有効だということです。多くの求職者の方々、特に中高年の方々は、これまでに自分のパーソナリティの特徴や価値観といったことを考える機会をほとんど持ったことがありません。そういった方々にとって、これからのキャリアを考えるために自己理解を深める作業が必要です。例えば、自分のパーソナリティを考えることを通じて、自分のライフキャリアに関して思いがおよび、動機を知るきっかけを提供できる場合があります。このように自分のことを考える「きっかけ」を提供できるすばらしいツールだと思います。

次に、「②.コミュニケーションスキルを向上できる」ですが、導入目的で述べましたように、求職者の方々にとって、新しい職場において良好な人間関係を維持していくことは、仕事をしていく上で極めて重要なことです。自分と異なる色々なタイプが世の中に存在し、それは指向の違いであるということを理解することで、多様性を認められるようになります。これも自己理解同様、コミュニケーションのことを考える「きっかけ」を提供することができ、求職者の方々にとって非常に有益なことです。

三番目の「③.自己肯定感が生まれる」ですが、求職者の方々の中には、自己肯定感が低い方がいらっしゃいます。そういう方々にとって、自分のパーソナリティの特徴を明確化していくプロセスを通じて、他人と違う部分が自分の特徴であり、それでいいんだという肯定感が芽生えてくることがあります。小さな成功体験を積むことで自己肯定感を養っていくことができますが、MBTIを通じてもそれが可能だと感じています。

最後の「④.自己開示のきっかけを提供できる」ですが、グループ形式でベストフィットタイプを考える場面において、同じ指向と思われる他の人達と話している内に、人前で話すことに抵抗を感じていた求職者の方が、徐々に自己開示ができるようになることがあります。壁が取り払われ、その後の求職活動に明らかな変化が生じます。

4.今後の課題

今後の課題といたしましては、さらに自己理解を深めていただくために「タイプダイナミックスを中心テーマとしたセミナーの開催」を検討したいと考えております。また、同時に認定ユーザー自身の自己研鑽(=MBTIの理解を深める)が必要であると強く感じております。

最後に、私自身がMBTIと出会えたことで自己理解が深まり、自己成長できたことが、MBTIをここまで広めることができたと思っております。今後も、MBTIを活用し、一人でも多くの求職者の方々に喜んでいただけるサービスを提供していくことで、日本におけるMBTIの普及に貢献していきたいと考えております。
日々ご尽力されていらっしゃる園田先生を始め、関係各位の方々にこの場をお借りして感謝申し上げるとともに、ますますのご発展を祈念申し上げます。

【まとめ】

1.MBTIの導入目的
①再就職支援プロセスにおける品質向上のため
 ・性格分析
 ・自己理解の促進
②再就職支援におけるスキルアップ
 ・コミュニケーションスキルの向上

2.展開方法と実践内容
①東京でのセミナーの企画
②社内向けセミナーの実施
③クライエント向けセミナーの実施
④インハウスでの認定ユーザー研修を実施
⑤全国展開へ
⑥CCMPでのツール紹介

3.MBTIの効果
①.自己理解を深めるきっかけを提供できる
 ・パーソナリティの特徴
 ・「本来の自分」と「なりたい自分」の明確化
②.コミュニケーションスキルを向上できる
 ・指向を理解することで多様性を認められるようになる
③.自己肯定感が生まれる
 ・自分は自分でいいんだという気持ちが湧いてくる。
④.自己開示のきっかけを提供できる
 ・グループで指向の確認をしながら、否定されない安心感の中で徐々に自己開示ができるようになる

4.今後の課題
①.タイプダイナミックスを中心テーマとしたセミナーの開催
②.費用の問題
 ・タイプ入門と回答用紙で2,300円かかる
 ・認定ユーザーの資格取得に時間がかかり、
  十分な要員を確保できない
③.自分自身のスキルアップ
 ・フォローアップ研修への参加

5.その他

日本におけるMBTIの導入事例

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